14 ザグレブ
ホテル上層階からの窓の眺めは美しい。小さな公園を挟んで広場が見える。その向こうにはザグレブの中央駅があるから人通りが多い。青色の路面電車が印象的だ。駅から続く人の流れは、そのほとんどが北へ向かっている。その方角には国の主要官庁が集まるゾーンがある。首都と言っても東京のように高層ビルが立ち並んではいないから、この高さから眺めれば、意外と広い範囲が見渡せる。この町で今日から二日間、どんな出会いが待っているのか。上がり気味の程よいテンションで朝風呂に向かうと、バスルームは広くて綺麗。なかなかいいホテルだ。一つくらいは贅沢をしようと事前に取っておいた唯一のホテルだったから、期待通りでとてもうれしい。こうなってくると朝食も楽しみだ。昨日の到着が遅かったから、レストランはまだみていないけど、きっといい感じだろう。
アールデコ調のインテリアをそろえたクラシックスタイル。建物自体がそうだから当然と言えば当然だけど、このホテルは全身でもって古典を表現している。オリエントエクスプレスの全盛期に開業し、一部の修復はしたものの、当時のままらしい。流行と廃りの大きな流れに翻弄されない強い意志が、今ではこのホテルをまとう強烈なオーラになっている。安宿もそこでしか味わえない何かがあるけれど、やっぱりこういう贅沢も一つくらいはいいものだ。ゆったりと遅めの朝食を楽しんだら、今日は町へ繰り出す予定でいる。午後からは、現地在住の日本人ライターと落ち合うことになっている。ザグレブの夜にも精通しているらしいから、とても楽しみだ。
ザグレブ中央駅から北へ向かう道沿いには、のどかな公園が続いている。公園の北の端までくると、その先は新市街。有名なイェラチッチ広場(共和国広場)や、聖母被昇天大聖堂もこのゾーンにある。広場の第一印象は、どことなしに殺風景。路面電車のレールが妙に無機質に映る。ふらふらしていると、興味深いお店がたくさんある。大型店舗はあまりなく、こぢんまりした個性的なお店が多い。ショッピングは特別趣味ではないけど、こんな町なら楽しめるかもしれない。現在に面白味が詰まっている、ザグレブはそんな町かもしれない。ちょっと足が疲れてきたから、カフェで少し休憩しよう。この辺りは、大小カフェがたくさんある。
たっぷりクリームが入った濃厚なコーヒーと、ラズベリーソースの入ったチョコレートケーキ。多くのカフェでそんなメニューを見かける。昨日の車内でのブランコのはなしでは、その組み合わせはブランコ流だといっていたけど、どうやら地元ザグレブっ子達の流行のようで、いうならば、ザグレブ流だ。ちょっと日本人には濃厚すぎるかもしれないけど、ガラスのウィンドウケースは、色とりどり、とても綺麗でおいしそう。さすがにスイーツまでは食べられないから、ザグレブ流の濃厚コーヒーだけを味わうと、もう気分はザグレブっ子。あまりにも単純な自分をおかしく思いながらも、とっても気持ちがよくなった。こうなったらもう、旧市街になんかいくもんか。
レザー製品、クラシックスタイルのメガネ、画材、アクセサリー、本、絵画、靴、たくさんの専門店を渡り歩いて、最後にやってきたのがレコードショップ。都会のショップだから豊富なラインナップで迎えられると思っていたのに、並んでいたほとんどは定番中の定番ばかり。最前列にビートルズ連発、ちょっと下がってクラプトン、ストーンズ、日本の感覚でいうと古めのラインナップが中心だ。貼られているポスターなんかも、どれも若々しさがないのは気のせいだろうか。
つづく
Mateo=Rich



ザグレブは古いものを大切にする街。
返信削除どうして日本人は新しいもの好きなんだろう。
ぜーんぶ建て直して、最先端を良しとするんだろう。
クリームたっぷりのコーヒーと
ラズベリーソースのチョコレートケーキ。
じゃあ私はケーキを食べたのにな。
しの