18 ワインに木製オーナメント(後編)
ホテルに戻ると、迎えのブランコがもう来ている。玄関の外れにルノーが停まっているからすぐに分かる。ワインをとりに急いで部屋へ上がって、そのまま流れ込むように車に乗り込んだ。ブランコのルノーは、複雑な市街地を迷うことなく進む。さすがにスピードは控えめだけど、ホームグラウンドならではの軽快さがあった。20分ほどで到着。ザグレブ北西部にある住宅地。こちらでは新市街の民家でも、どことなしにクラッシックな雰囲気があってなかなかいい。素敵な笑顔で明るく迎えてくれたのはブランコの母シルヴァと、ガールフレンドのミラだ。二人はとても仲がいい。今日の料理もいっしょに作ったのだという。テーブルにはすでにたくさんの料理が並んでいる。タイミングを失ってはいけないと、ワインを取り出しブランコに渡すと、みなとても喜んでくれた。そしてもう一つ、さっき選んできたオーナメントを取り出して、ワインボトルの首に掛けると、小さくわいた。ブランコが促して、全員がテーブルにつきワインを注ぐ。友人家族と過ごす、クロアチアでの最後の夜が始まった。
会話の中心はミラだった。好奇心旺盛に質問してくる。家族のこと、仕事のこと、将来のこと。そしていつかブランコと結婚して、日本へ遊びに行きたいと言っていた。その時は車で日本中を案内すると約束した。一方でシルヴァは、口数は少ないけど所々で気遣ってくれて、息子のように接してくれた。日本に限らず世界中の男子がマザコン傾向にあるのも無理のない話だ。クロアチアの母にも、元気で長生きしてもらいたいと、心から思った。
食事も一段落して部屋を見渡すと、奥の壁に一本のガットギターがかけられている。とても古いギターでほこりをかぶっているからしばらく弾いていないのだろう。思わず手に取って弦をはじくと、ナイロン弦独特の深くて暖かい音がした。思いだすのはアドリア海沿いで聴いたミッシェル。暖かいおもてなしへのお礼もかねて、演奏しよう。そう思ってイントロを爪弾くと、ブランコが空き瓶を鳴らしてビートをとってくれた。シルヴァとミラの優しい視線を感じながら最後の弦をはじき終えたとき、満足感と同時に、旅が終わっていくのを感じた。
つづく
Mateo=Rich
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