2011年3月23日水曜日

2011.03.22 「回転木馬 三」〜シューマンに寄せる物語〜

 月の美しい夜でした。夜中に目の覚めた女の子は、隣の庭に音楽家が立っているのを見つけました。女の子は急いでベッドを抜け出し、庭に駆け降りました。音楽家はこちらに気づくと、当たり前のように話しかけました。
「やあ、こんばんは」
「・・・こんばんは」
女の子はドキドキして、そう答えるだけで精一杯でした。
 音楽家は手のひらで包んだものを差し出しました。小さな屋根の下に円を描くように木彫りの馬が並んでいます。
「回転木馬?」
「オルゴールだよ。よく見てご覧」
音楽家はねじを巻きました。流れるような美しい音に乗って、木馬はくるくると回転し始めました。女の子がじっと見つめていると、小さな木馬はぶるんと首を振りました。そしてぱちぱちと二度まばたきをしたかと思うと、屋根の下から飛び出して、森の中へ駆けていってしまいました。
「ああやって時々遊びに行って、森の音楽を拾ってくるんだ」
音楽家は森を眺めながら言いました。からっぽになった回転木馬のオルゴールは、静かに回り続けました。




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つづく
しのはずり

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