19片言なやつら
荷物はそれほど多くないから荷造りには時間はかからない。もう少しするべきことがあれば気もまぎれるのに、最終日の朝は、なんだか名残惜しい気持ちでやや切ない。特にすることもないし、町へ出かけるほど時間もないから、ホテルの窓枠に体ごと納まって外を眺めている。ザグレブに来てから一日として爽快に晴れた日はなかったけど、今日の空もあいにくさま。曇りのち曇りといったところか。真下に見えるスケートリンク設置現場は、少しずつ全体像が見えてきている。スポンサー企業の広告が掲げられているから、完成が近いのだろう。でもこんな天気だから、元気に遊ぶ子供たちの笑顔までは浮かばない。やはり最終日独特のもの悲しさが、見る景色をも支配しているようだ。
初日のクラーゲンフルトでは遅刻してきたブランコなのに、今日は予定通り。スーツケースを積み込んでくれる姿が感情を刺激する。郊外の空港へ向かう車内もこれまでとは少し違う雰囲気で、何を話していいのかわからない。スプリットへ向かっていた海岸線同様の沈黙が続いていたけど、空港近くのTOYOTAのディーラーの前を過ぎるとき、指をさしてなにやらよくわからない日本語を叫んでいるブランコの姿が、とても温かく、楽しい気持ちにさせてくれた。本当にいいヤツだ。そう思った。
ザグレブ空港のターミナル。友人ブランコに別れを告げて、振り向かないつもりでいたはずなのに。
結局最後に振り向いて、午前中、ひそかに覚えた片言でつぶやいておいた。
フヴァラ ヴィディモセ (※ありがとう、また会おう)
つづく
Mateo=Rich

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