2011年3月29日火曜日

2011.03.28 「回転木馬 五」〜シューマンに寄せる物語〜

 音楽家は、美しい音楽を集めて旅をしているのだと語りました。大きな船の止まる港町、どこまでも続く乾いた草原、深い雪の積もる山の村、鮮やかな果物の実る南の島。遠い国の話に、女の子は胸をわくわくさせました。
「こんな月の夜が、どこの国でもいちばん音楽が美しく聞こえるんだよ」
そう言って音楽家はオルゴールを取り出しました。よく見ると、この前のオルゴールとどうも様子が違います。
「これ子鹿だわ。こっちはうさぎ」
木馬の後に続く動物が、鹿とうさぎに変わっていたのです。音楽家は笑って言いました。
「不思議なことはないよ。木馬が森の動物たちを連れてきているだけなのだから」
音楽家がねじを巻くと、オルゴールは前と違った軽やかなメロディを奏で始めました。そして木馬が駆け出し、続いて子鹿もうさぎも森の中へ飛び跳ねていきました。
 新しい動物がやってきた次の日は、隣の家からは新しい音楽が流れました。小川のせせらぎや、木々のざわめき、小鳥のさえずり・・・それは動物達の拾って来た音楽でした。
 音楽家は月に一度、月夜の晩にだけ庭に現れました。女の子は喜びを抑えきれず、音楽家のところへ走り寄るのでした。見たことのない異国のお話と森の音楽に耳を傾け、それは幸せなひとときでした。





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つづく
しのはずり

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