2011年4月4日月曜日

2011.04.04 イストラ半島紀 23:空中着陸 (最終回)

23 空中着陸

 食事を終えて、身分不相応のこの空間にも慣れてきて、別に特別なことでもないように思えてきている。人間の適応能力とは時に厄介だ。贅沢も始めてしまえば当たり前になってしまうのだから。

 落ち着いた気持ちで窓の外を眺めていると、今日も空には無数の星が散らばっている。星に願いを言うけれど、これだけあったらいったいどれをチョイスしていいのかもわからない。そういう意味では星に願うなら地上がおすすめかもしれない。雲の切れ間にひときわ輝く一つを狙えばいいのだから。こんな風に上空を飛ぶときは、無数の星達をも抱え込んでいる宇宙に思いをはせたらどうか。その方が、より正確に、万物の中での自分の立ち位置やサイズを感じることができるから。そんな立場で見る宇宙は、実に無機質で、願いをかなえるどころか、こちらには全くの無関心。どうにでもなりやがれといった態度だ。子供のころから宇宙のそういう態度には気付いていた。そしていつからか、それが宇宙に限らず、地球と人類、社会と個人の間にもあてはまることに気付いていた。個人に無関心なのだから、当然何の期待もしていない。だから個人は生きたいように生きればいい。酔ったせいもあってか、そんな風に、原点に立ち戻らせてくれる窓の景色だった。

 何か一つ、はっきりした答えがあるわけではない。旅を振り返って思い出すのは、ブランコらと過ごした楽しい時間や、それぞれの町でみた現在の人々の暮らしとか。窓の景色をバックに思い浮かべる旅の思い出の一コマ一コマが、まるで映画の様に頭の中を流れていく。なかなかいい旅だった。日本に帰ったらこの旅のことを書こう。特に目的はないけど、邪念のない、純粋な表現欲を満たすためだけに書こう。そう決めたとき、どこか懐かしい感覚と、新しい旅のはじまりを感じた。

 機体はシベリア上空あたりか。成田まではどれくらい。着陸の時を待たずして、イストラ半島紀を空中着陸にて結ぶ。


Mateo=Rich

0 件のコメント:

コメントを投稿